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福島家庭裁判所 昭和36年(家)2946号 審判 1960年10月12日

申立人 小野治(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

一、本件申立の要旨は「伊達郡霊山町長に対し、御庁三五年(家)第三、〇一八号戸籍訂正許可申立事件の審判に基き、昭和三十五年十月申立人が為したる戸籍訂正届出を受理すべきことを命ずる旨の審判を求める。」というのであつて、その理由とするところは、申立人は福島家庭裁判所にてなされた別紙(一)審判書記載の戸籍訂正許可審判に基いて戸籍訂正の届出をした処、別紙(二)伊達郡霊山町長菅野平右衛門名義の書面の理由にて届出の受理を拒まれたものである。しかしながら右不受理の処分は不当であるから、本件申立に及んだものであるというのであつて、関係資料により右申立事実は認められる。

仍つて案ずるに戸籍事務管掌者である本件町長が、家庭裁判所の審判とは別途に法解釈を下して申立人の本件届出の受理を拒んだのは、審査権の範囲を逸脱するものであるからということが問題点となろう。

即ち福島家庭裁判所は旧民法当時(昭和十九年二月二十七日)の戸主小野ヒサの死亡により婿養子治が家督相続人となるべきに拘らず、その長女タミ子の家督相続をした旨の戸籍編製したのは違法であるとして小野治の戸籍訂正許可申立に基き、それを認容し前述審判をしたものであるが、これに対して戸籍事務管掌者である霊山町長は婿養子治はタミ子(昭和十四年十月十日生)出生後昭和十五年十二月四日養母である戸主ヒサと離縁、妻ミエ(ヒサの四女)と離婚し、一たん家を出た後に再び昭和十八年三月十二日婿養子に迎えられたものであつて、その結果婿養子治の直系卑属がその地位を代襲して相続人となるものであるから(旧民法九七四条)、本件戸籍記載は何らの違法はないとするのである。そうして民法附則・旧民法九七四条の解釈としては後者の見解を採らざるをえないから本件戸籍記載に何らの錯誤遺漏はなく、従つて申立人の訂正届出は受理されるべきではないということになる。

一、尤も市区町村長の戸籍届出に対する形式的審査権の範囲内には法令の解釈問題が含まれるかは論の別れるところであるが、仮りに法の終局的解釈は裁判所によつてなされるべきであり、従つて先きになされた福島家庭裁判所の審判において示された法解釈につき、行政庁である霊山町長はその適否を判定すべきでないとしても、裁判所の判決審判等の裁判が、その形式内容において無効乃至違法であることの明瞭な場合には、行政庁としても当該裁判の違法、無効の判定をなしうべきものと解する。従つて本件において前になされた福島家庭裁判所の法解釈は旧民法九七四条の規定趣旨に違背すること明らかであるから、霊山町長のなした本件不受理処分は違法とは云えない。

(家事審判官 村崎満)

別紙(一)

昭和三五年(家)第三、〇一八号

審  判

本籍・住所 伊達郡霊山町大字○○字○○△△番地

申立人 小野治

上記申立人からの戸籍訂正許可申立事件について、当裁判所はその申立を相当と認め、次のとおり審判する。

主文

(一) 本籍伊達郡霊山町大字○○字○○△△番地戸主小野ヒサの除籍中同人の身分事項欄の小野タミ子家督相続による戸籍抹消の記載を消除して同戸籍を回復した上、新たに申立人の家督相続届出によつて新戸籍を編製し、

(二) 本籍前同所同番地戸主小野タミ子の除籍及び本籍、伊達郡霊山町大字○○字○○△△番地筆頭者小野ミエの戸籍をいずれも抹消した上これらの戸籍中所要の記載を(一)により新たに編製した戸籍に移記する

ことを許可する。

昭和三十五年十月十二日 (福島家庭裁判所)

別紙(二)

日記第一五号

昭和三十六年二月十日

伊達郡霊山町長 菅野平右衛門

小野治殿

戸籍の訂正申請について

昭和三十五年十月十三日付昭和三五年(家)第三〇八号をもつて戸籍の訂正の審判が福島家庭裁判所においてなされたが、この審判に基き福島地方法務局の長が法務省民事局長にこれが受否につき伺いをした結果次のとおりの回答があつた旨通知があつたから通知します。

一、小野治は昭和十三年八月三十一日小野ヒサ四女ミエと婿養子縁組婚姻し入籍したが昭和十五年十二月四日養母ヒサと協議離縁妻ミエと同時に協護離婚し実方に復籍し除籍となつた。

一、昭和十八年三月十二日更に小野ヒサ四女ミエと養子縁組婚姻を為し再び入籍した。

一、然るに小野治は昭和十五年十二月四日養母ヒサと協議による離縁妻ミエと協議離婚し除籍となつたとき小野治、ミエとの間に生れた長女タミ子(昭和十四年十月十日生)があつたので旧民法第九百七十四条の規定によりヒサの孫であるタミ子が代襲相続人となつた。

一、依つて既に第三者(タミ子)が代襲による相続権を取得した後に実父である治が入籍してもこれを犯すことができない。

一、故に小野治には家督相続権がない。

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